大糸タイムス主催、大糸タイムス友の会・大北医師会・大町市共催

「水虫の治療と予防」

市民のための健康講座


 第16回市民のための健康講座(大糸タイムス友の会、大北医師会、大町市共催)が7日、大町公民館分室で行われた。約40人の市民が訪れ、かさぎ皮ふ科の傘木和子院長の「知っているようで知らない『水虫』」と題した講演に耳を傾け治療や予防方法など学んだ。




日本人4、5人に1人が水虫


 水虫は非常に身近な病気なだけに「不潔にしている人がなる」「男の人がなる」「夏にしかならない」「足の皮が剥けたら水虫」「かゆくないから水虫ではない」など、認識に誤解が多い。

 少し前の調査だが、日本人の4、5人に1人が足の水虫、10人に一人が爪の水虫にかかっている。5、60代から急激に増え、60代に限っては3人に1人が水虫という統計もある。抵抗力が落ちる糖尿病患者では2人に一人。

 水虫の正式な病名は足白癬はくせん。正体は真菌(カビ)の一種である皮膚糸状菌。頭につけば頭部白癬しらくも、体部につけば「たむし」、股につけば「いんきん」。皮膚の性状も違うことから症状や治療に対する反応性も変わる。

 このカビは角質を食べ、その主成分であるケラチン蛋白を栄養源とする。皮膚表面で白癬菌は感染し増殖する。この菌は角質以外では増殖せず、表皮より深くで病巣を作ることは通常ない。

 「水虫で足がはれあがった」「水虫が全身にまわった」といううわさもあるが、白癬自体が原因ではなく、細菌の二次感染で生じた例と考えられる。

 毎日、角質が一枚ずつはがれていくとともに白癬菌がちらばる。その白癬菌を踏んだから感染するということではない。角質細胞間にある抗菌物質や表皮の免疫反応で大概は排除されるが、それらが弱い人が感染、発症し、菌をばらまく側になる。

 すぐに洗えば菌は落ちるが、踏んだ後に靴をはき足が蒸れる状況やキズがある場合などは感染リスクは高まる。
 白癬菌に感染しやすい条件は、高齢者や糖尿病患者、足の変形がある、指の間が狭い、血行が悪い、末梢神経障害がある、汗が多い、靴を長時間はく、公衆浴場によく行くなど。

 水虫の症状、かゆみがあるのは1割程度。
指の間にジュクジュクとした皮むけがある「趾間型」、土踏まずや指の付け根に水ぶくれができる「小水疱・落屑型」があり、ともに春、夏に悪化する。
かゆみはなく、足の皮膚が固くなり皮がむける「角質増殖型」もある。水虫の中でも重症型で外用剤では治りにくく、内服薬が必要。

 爪水虫は、ほとんどが足白癬から感染。放置すると爪が変形、厚さが増し、巻き爪となり痛みも伴い踏ん張りがきかず、運動の能力低下につながる可能性がある。

 自身の水虫を疑い受診される方の約3割がほかの皮膚病と言われる。まぎらわしい疾患には、湿疹やかぶれ、乾燥肌などがある。小学生以下で水虫を疑い受診される人の8、9割は、水虫ではなく汗による湿疹。

 水虫の確実な診断方法は、角質、水ぶくれ、爪を取って顕微鏡で真菌を確認すること。
 「市販の水虫の薬を塗っても治らない」と受診に来る人がいるが、1回でも薬を塗ると菌の検出率が低くくなり見逃してしまう。菌が見つからない限り、抗真菌剤(水虫薬)は使用しないのが原則。疑わしい場合は、何かを塗ってみる前に検査しに来てもらいたい。





症状消えても根気良く受診



 菌が見つかり治療に入る場合、抗真菌剤を使うことになる。
 液剤やスプレー剤が好まれるが、アルコール分も含まれていることから刺激性も強く、かぶれを起こす可能性も高い。クリーム剤はのびがよいなど使い勝手が良いことから処方されることが多い。

 軟膏剤は、油分が多くベトつくことから嫌われるが、刺激が少なく安全性は高い。

 薬剤使用による副作用は1〜5l程度でかぶれが主、塗って4、5日位して異変を感じたら受診を。

 薬剤を塗る量は、1日1回入浴後が基本。足底、足指全体にくまなく塗ることが重要。相手はカビ、指の間にしか症状がなくても、足全体に散らばっている可能性もある。片足しか症状がなくても、出来れば両足に塗ることを薦める。

 治療期間は、塗り初めて1週間ほどで、菌をばらまく量は激減していく。1か月塗るとほとんどなくなると言われている。家族の中で水虫の人がいたら、そろって治療する方が再発予防に効果的。

 軽症の場合は2〜4週間で症状はよくなる。足の裏全体の症状の場合は3、4か月かかる。症状が消えても、その後、3か月程度は塗り続けた方が適当。

 爪水虫は塗り薬では治りにくく、基本的に内服治療。「痛くもないんですが、治した方がいいんですか」と聞かれる場合があるが、放っておくと爪が厚くなり痛みが伴ってくるのでできる限りは治療した方が良い。

 生え変わりにつれて正常化していくため治療は長期間かかる。内服薬の有効率は約70l。再発、再感染率は高く、治療終了5年後、無症状の人は2〜5割程度。




3人に1人は家庭内感染



 一回かかると治療が長期にわたり面倒な水虫。予防が大切。
 白癬菌は、靴を脱いで歩く所ならどこにでも、ありとあらゆる場所に存在する。菌は春夏に多く、秋冬に少ない。温度の高いところに多い。水虫患者3人に1人は家族に水虫の人がいる。家庭内でうつる人が多いとされている。家庭内で菌の多い場所はバスマットやトイレのスリッパ、畳、フローリング床、布団、座布団など。

 ばらまかれた菌は、自然に減っていくが、数か月は感染力を持っている。乾燥した環境でも3か月とされる。
 菌の除菌方法は水拭きを中心とした掃除や洗濯。洗濯については分別する必要はなく、靴下は裏返しアカが落ちるようにする。

 予防対策は、スリッパやバスマットの共有を避ける。掃除洗濯をこまめに、毎日石けんで足を洗う、毎日、同じ靴をはかない、
 温泉やプールなど感染リスクが高い場所に行った場合は、アカスリをしない、足をよく乾かしてから靴下をはく、帰宅したら足を洗う、抗真菌剤を塗ること。




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