肺がんはCT検診で  市民のための健康講座





 国内のがん死亡率の第1位は肺がん。発見後の5年生存率は15%といわれるほど致死率が高く、早期発見が求められている。このほど開いた、本紙と大糸タイムス友の会、大北医師会主催の第4回「市民のための健康講座」で、肺がん検診では世界レベルと言われる、池田町の厚生連安曇総合病院呼吸器外科部長の花岡孝臣医師の肺がんの早期発見に向けたCT検診の有効性についての講演要旨を再録した。


予防で死亡減らそう

 同じ体の中を見る方法でも、これまで検診に使われていた従来型のX線レントゲン検診と比べ、体を輪切りにするCTは解像度が高く、はっきりと違いがわかります。このCTを最初の検診に使い、治せる早い段階の肺がんを見つけることで、死亡率の低減につながります。
 がんは火事にたとえられる。誰でも、いつでもかかる可能性があり、予測ができない。早期発見、予防が大切です。地域社会での、がんによる死亡者を減らしましょう。
 がんの治療は、手術後5年たったときの生存率が目安になります。日本では、日本肺がん合同登録委員会や国立がんセンター中央病院など、通常の病院では5割前後、約半数です。
肺がんが症状から見つかった場合は、発見時に末期の方が7割で、この場合は手術治療が望めません。手術ができる残り3割の中で半数ですので、全部をあわせると、がんがわかった方の5年生存率は合わせて15%くらいといえます。
CT検診受診者の5年生存率は、長野県での調査で90%。安曇病院では死者はなく、無再発見率が96%にのぼります。症状が出る前に、検診によって早期治療ができる段階で発見することが大切ということがわかります。
1次検診は、通常のCTの数分の1に放射線被ばく線量を抑えた低線量CT検診。機械が回転して撮影し、コンピューター解析で画面に写った像を読影者が分析します。結果は1か月以内で書面でお伝えし、精密検査の場合はもう1度、より高分解能の通常のCTを撮ります。
 1次検診は、@肺がん疑い濃厚、A未確定、B炎症巣(非がん)濃厚の3段階に分かれ、がんの疑いが強い場合は実際に組織を取り、検査と治療を兼ねます。肺炎などの場合は抗生物質投与後に再検査したり、次年度検診で注意する場合があります。多いときは3人に1人が精密検査が必要と言われます。精密検査と言われたからと言って、心配しすぎないでください。
1次検診の料金は無料から1万円程度で、機関によって割合が異なります。精密検査になった場合は1万3000円程度で、保険で3割負担となります。
 低線量CT検診の放射線被ばく線量は、レントゲンの10回分。バリウム検査やマンモグラフィーと同等の被ばく線量で、CT検査によって、新たにがんが発生したという報告はこれまでにありません。



 従来のレントゲンでなくCTを用いるメリットは、肺がんになっていた場合、早期治療で命を奪われることを防ぐことができます。
症状による発見では、抗がん剤での治療時期が長くなりがちで、医療費も高額になり、治療成績も未知数です。抗がん剤での化学療法は、治療より数か月程度の延命が目的になります。早期の切除を超える治療法は現在のところありません。
また、胸部のCTを撮影することで、肺がん以外の病気を発見できる可能性も多くあります。肺気腫や間質性肺炎など肺の病気のほかに、ポリープや動脈硬化、肝臓がんや胆石、メタボリック症候群などが見つかる場合があります。
 一方でデメリットもあります。検査で陽性とされても、炎症巣との区別がつきにくく、がんでない場合がある。患者の不安を招いたり、精密検査を受ける場合がある。検査費用がかかったり合併症の恐れがあるとして、中には慎重な病院もあります。私はがんは火事だと思っているので、火が小さいうちに消したほうがいいと思います。
 大北地域では、胸部CT検診は@病院の人間ドック(オプション)、A自治体検診のCT検診車、B厚生連によるCT検診車と3つの検診機関に恵まれた、盛んな地域と言えるでしょう。
 大北での連携医療体制を整え、適切な治療が受けられるように医療を提供したい。大北は面積が広い割に治療医が散在しているので、松本や長野とも連携体制を整えています。





小さいうちの「消火」


 がんは遺伝子の変異が原因。天然から浴びる常時弱い放射線で、遺伝子に傷がついていきます。年をとればとるほど傷が蓄積され、がんになりやすい。たばこや発がん物質、紫外線やウイルスなどを避けるしかありません。
 自覚症状が出た段階では遅い場合もあります。がんの発育が早い場合、次の検診までの間に自覚症状で見つかることもまれにある。肺がん発生の身近な原因はたばこ。喫煙者は毎年、非喫煙者は3年ごとに受けてほしい。
 症状が小さいうちに発見・治療できれば大事に至らず、身体や経済的な負担も少ない。検診機関は火の見やぐら。「がん用心」のためには検診です。小さいうちに消火をしてください。







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